義肢装具士はユーザの生活を、ものづくりで支える仕事

義肢装具士

こんにちは。「二足歩行ロボットを作りたい!」から義足に出会い、義肢装具士・20年目のBionicM松原です。

これから義肢装具士が何をしているか・どうなるか・進路や仕事の魅力についてお話ししていきます。

1. 義肢装具士とは?

厚生労働大臣の免許を受けて、義肢装具士の名称を用いて、医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合(以下「義肢装具の製作適合等」という。)を行うことを業とする者をいう。

 

言い換えると、体のない部分に装着する「義肢」と体はあるが問題がある部分に装着する「装具」を作り、義足ユーザーのからだに合うよう適合するお仕事です。

※ 義肢とは

上肢又は下肢の全部又は一部に欠損のある者に装着して、その欠損を補てんし、又はその欠損により失われた機能を代替するための器具器械です。

※ 装具とは

上肢若しくは下肢の全部若しくは一部又は体幹の機能に障害のある者に装着して、当該機能を回復させ、若しくはその低下を抑制し、又は当該機能を補完するための器具器械です。

2. 義肢装具士の仕事内容

実は、患者さまに触らず義肢装具を作るだけならば義肢装具士の国家資格はいりません。義肢装具士の国家資格があって初めて、採寸・採型や適合時に患者さまに触れることが出来るのです。(※医師、看護師であれば対応可能)

まず、患者さま一人ひとりの身体のサイズを測り形をコピーします。これを採寸・採型と呼びます。型を取るため、石膏(ギプス)やレーザーを当てるなどさま々な手法があります。

人の体に硬いプラスチックや金属を付けるため、採型から一度でしっくりいくことは中々難しいといえます。
製作した後は仮合わせを行い、しばらく使用いただきながら微調整を繰り返して上手く適合させていきます。

採寸・採型の多くは病院で行い、一部は、義肢装具製作会社で行います。病院で採寸・採型したケースの多くは病院の入院中にご納品し、その場で義肢装具士が患者さまに合うように調整していきます。

納品したものを使ってリハビリし、患者さまが生活できそうと思えることが、退院の条件になることが多いです。その後、基本は会社にご来社いただき手直しします。(会社によっては、自宅までサポートする場合もあります)

仕事の範囲は、一般的に、大企業ほど分業制で、義肢装具士が病院に行くことが多く、会社で製作することはあまりありません。一方で小さい会社ほど、病院にも行くし会社で製作もすることが多いです。

あくまで筆者の見解ですが、はじめのキャリアは、一貫制で全体感が見渡しやすい小さめの会社の方が、結果役に立つことが多いかなと思います。仮に、分業制で採型と適合しかしないと作り方が分からず、調整がうまくできないなど壁に当たることもありそうです。

実際に、どのように製作するかは、短く説明することは難しく、石膏、金属、プラスチック、革、木材、スポンジ類など、多岐にわたる材料をさま々な方法で扱うのが義肢装具士の仕事になります。腕の見せどころです。

3. 義肢装具士に求められる知識

この業界に身を置いて20年目ですが、わたしは理系としての数学や物理、大学での工学の知識が役に立ちました。

 ただし、採寸・採型や適合ばかりが義肢装具士の仕事ではありません。

 臨床現場の義肢装具士という意味では、幅広い知識・経験と、患者さまに向き合ってお話を聞き、コミュニケーションをしっかり取るスキルが役に立つと感じるシーンが多いです。 

そう、義肢装具士=ものづくりのイメージが一見多いですが、患者さまとの向き合い力が求められる実は高度な仕事なのです。 

幅広い知識・経験というのは、例えば最近でいえば「オートバイに乗ったことがあるか」などです(近頃はあまり人気ないですが…)。

オートバイの事故が切っ掛けで障害を負った患者さまは、願うならまたオートバイに乗りたいと仰られることが多いです。

その時に義肢装具士自身が乗ったことがないと、どんな動作が必要で、障害の状態ではそのどれが困難かが分からず、課題の解決に苦労することがあります。

そのため、極めなくても良いのですが、様々なスポーツや趣味を幅広く経験されている方は大歓迎です。

とはいえ、全てのことを中々経験は出来ませんし、時には解消できないこともあります。

このとき、患者さまに寄り添い、傾聴し、できないこともご理解いただかなくてはなりません。現場ではこれが非常に難しく、この時に対話する・向き合う力が求められるなと感じます。

もちろん、対話するのは患者さまだけではなく、臨床現場の医療スタッフもいらっしゃいます。円滑なコミュニケーションで信頼関係なくしては、患者さまの望む一番合う義肢・装具をご提供するのは難しいでしょう。

最終的には、色んなことに興味を持てる好奇心が重要だと思っています。

4. 義肢装具士国家試験に合格するために

国内であれば、養成校に3年または4年通うことが求められます。
ただし、もし条件が許すならば、まず工学系の大学を出てから3年制の養成校に入ることをお勧めします。理由は4つあります。

  1. 4年制の養成校、つまり大学に行っても、工学系のようなしっかりとした卒業研究ができるところは多くないため
  2. 4年制の養成校を卒業してから、工学系の大学院に行く人も増えてはいますが、大学院だと学部の時の基礎的な授業を受けられないことがほとんどで、結局中途半端になってしまうケースが多いため
  3. 3年制であれば1年早く社会に出られて授業料も節約できるため
  4. 既に大卒の資格が保有できているため
 

4-1. 合格率

厚生労働省によると、平成31年2月22日に実施された第32回義肢装具士国家試験の合格率は89.4%です。

※参照:第32回義肢装具士国家試験の合格発表について – 厚生労働省


一般問題を1問1点、実地問題を1問2点、合計130点満点のうち78点以上が合格です。
しっかりと勉強・対策をして、基礎の定着をはかることが求められますね。

なお、受験資格は次のとおりです。

  1. 学校(文部科学大臣が指定)・義肢装具士養成所(都道府県知事が指定)で3年以上義肢装具士として必要な知識・技能を修得した
  2. 大学・高等専門学校(学校教育法)か大学(旧大学令)か学校・文教研修施設・養成所(義肢装具士法)で1年以上学び、厚生労働大臣の指定する科目を取得し、1.の対象校で、2年以上、義肢装具士としての知識・技能を修得した※厚生労働大臣の指定する科目って?
    ・心理学、倫理学、社会学、人間発達学及び社会福祉学のうち1科目
    ・数学、物理学、生物学及び数理統計学のうち2科目
    ・外国語
    ・保健体育
  3. 義肢及び装具の製作に係る技能検定(職業能力開発促進法)に合格し、1.の対象校で、1年以上、義肢装具士としての知識・技能を修得した
  4. 外国で義肢装具士関連の学校・養成所を卒業、義肢装具士に相当する免許を持ち、厚生労働大臣が(1)~(3)と同等以上の知識・技能を持っていると認定
  5. 過去、義肢装具士として必要な知識及び技能の修得を終えている
 
※参照:義肢装具士国家試験の施行 – 厚生労働省

4-2. 進路、就職先

民間の義肢装具製作会社がほとんどです。

病院やリハビリテーションセンター、教育機関、研究機関、メーカー等はそもそも枠が小さいため毎年募集があるわけではなく、自分の卒業年に募集が掛かるかどうか、運によるところも大きいです。

わたし個人は運が良く、リハビリテーションセンターに就職できましたので、義足・義手の適合に関して時間をかけて検討する機会を得られました。

やはり、義肢装具士であるからには、将来研究や開発に携わるにしても、臨床経験がないと話になりません。

民間の義肢装具製作会社はどんな感じかというと、リハビリセンターに比べると作業スピードが速いです。なぜなら、どの業種も同じだと思いますが、やはり利益を生み出さなければ会社が立ち行かないからです。

そして前述したように、一度製作しても調整を必要とします。人件費を考えると可能な限り速やかに納品することを求められるのです。

例えるのであれば、民間の義肢装具製作会社では平均点の60点以上を目指すのに対し、リハビリテーションセンターでは時間と手間をかけ可能な限り100点を目指すようなスタンスの違いがあります。

一見、リハビリテーションセンターの方が良いように聞こえますが、扱う数が圧倒的に違います。数多くのユーザさんに貢献し、この業界を支えてくださっているのは、間違いなく民間の義肢装具士さんです。つまり、民間の義肢装具製作会社の方が、より多くのユーザに貢献出来るのです。

よって、わたしが思うキャリア像は2つあります。

1. 最後まで臨床現場で、患者さまに近いところで良い義肢装具を提供し続けることに誇りを持った生き方

患者さま第一に行くのであれば、自分のやりたい専門分野を早く見つけ、スペシャリストになるのが良さそうです。

近年は、会社勤めだと自分の思うように尽くせないということで、一人で独立する人も増えてきています。

そのようにしてユーザと時間をかけて携わりたいと思える義肢装具士が出てきていることは業界として良いことだと思います。

2. 日本から世界へ情報発信できる義肢装具士になる

今の日本の義肢装具は、理論からパーツまで、ほぼ全て輸入されたものです。

よって、研究・開発問わず世界に通用するレベルに自身で研鑚する道があります。

この場合、時間はかかってしまいますが、臨床経験が絶対に必要です。

残念なことに日本の養成校の大学は研究と言えるようなレベルになく、自身で研究できる地位を探す必要があります。

開発だとしても、義肢装具士免許だけでは営業職になってしまい、実際の開発には意見を述べる程度しか関われません。

このため、工学系大学を出ている必要があるのです。

その上で臨床経験もとなると、正直、夜間の大学を利用するとか、色々と時間的に 大変な期間を経る必要がありますが、現状、日本ではそのようなキャリアの積み方しかないかと思います。

4-3. 男女比

男性が多いですね。

義肢装具士は、医療職ではあるものの、ものづくりがメインの仕事というイメージがあるため、女性が興味を持ちにくいのだと思います。

確かにそのような一面があるのは事実ですが、先に書いたように、大きな会社であれば、完全分業制を取り入れているので、モノづくりが苦手なイメージがあっても問題なく働けます。とはいえ、養成校時代はモノづくりをしなければなりませんが。

また、中小企業が多いのも事実で、10名~30名くらいの社員数の会社が非常に多いです。

こちらの場合は、採寸・採型・適合だけでなく製作もしなければならないケースが多く、平均年齢が高い会社だと、やはり徒弟制度のような感じは残っています。ですが、近年は平均年齢も低くなり、社内の雰囲気も明るくなってきている会社が増えています。

ただ、上記くらいの小さな会社が多いので、産休・育休などの制度がしっかりしているかと言われると、しっかりしていないのが現実です。

とはいえ、なによりも、業界には女性の義肢装具士がもっと必要なのです。

義肢・装具の多くは、体の形をコピーせねばなりませんので、服を脱いでいただくことが多々あります。この時、女性の患者さまであれば、女性の義肢装具士に採寸・採型してもらいたいと思うのは当然のことです。

女性の障害者や、年齢の高い女性特有のひざ痛や脊柱の骨折など、女性同士で助けてあげたいと思う人が義肢装具士を目指してくれる、そんな未来を願っています。

4-4. 国家試験の情報

義肢装具士の国家試験は1年に1回、2月の中旬に東京都で実施されています。

試験科目

  • 臨床医学大要(臨床神経学、整形外科学、リハビリテーション医学、理学療法・作業療法、臨床心理学及び関係法規を含む。)
  • 義肢装具工学(図学・製図学、機構学、制御工学、システム工学及びリハビリテーション工学)
  • 義肢装具材料学(義肢装具材料力学を含む。)
  • 義肢装具生体力学
  • 義肢装具採型・採寸学及び義肢装具適合学 

5. 最後に

義肢装具士は、自分の作ったものが患者さまの生活の一部に根付く、すごく価値あるものを作れる誇りある職業です。

現在は年収面や業務量から、近年、パラリンピックで義足のランナーがテレビに出るようになっても、養成校の定員が埋まらない場合もあると聞いていますが、一方でチャンスが転がっている職業でもあると思います。

個人的には大学勤めをしている時に研究していた犬の義足など、ペット業界などにもチャンスはあると思っています(こちらは既に何人かが手を付けてしまいましたが)。

いずれにせよ、好奇心旺盛なタイプには、色々と挑戦し携われる部分の多い職業でしょう。

工学系の大学を出た後に義肢装具士養成校の3年制へ進み、臨床に出て数年働いた時点で、工学系大学大学院の社会人枠を利用して、臨床と研究を両立できれば、色々と道が開けそうですし、最後まで患者さまに寄り添うのであれば、自分一人で独立して会社を立ち上げるのも面白いはずです。

ぜひご検討ください!

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