義足でも車の運転はできるのか?運転免許の適性試験とは?

義足になっても車の運転はできるのでしょうか?

その答えは、「安全運転できるなら、義足でも運転できる」です。

義足ユーザーの中にはどんな車でも運転できる人、もしくは車に一定の改造があれば運転できる人もいれば、運転をすることが認められない人もいます。

この記事では、義足ユーザーが免許を取得する方法や適性試験、運転前に知っておきたい情報について解説します。

義足になっても車は運転できる

義足ユーザーで車で遠出したり、日常生活に役立てたりしている人は多くいます。
警察庁の調査によると、義手・義足・装具利用の条件付き運転免許証を保有しているのは、4,000人程度でした。

引用「運転免許統計平成29年版」警察庁交通局運転免許課

ちなみに、義足ユーザーも車の改造などの「条件付き免許証」で運転している人は「身体障害者用車両に限定」の項目に含まれています。義足ユーザーでも、義足なしで運転可能な「条件なし」の運転許可証を持っているケースも稀にありますので、実際には4,000人よりもずっと多くの人が免許証を持っていることになります。

ただし、義足と言っても人それぞれ状態が違います。残念ながら、義足ユーザーの誰もが運転できるというわけではありません。

運転免許証は、安全に運転が可能と判断された人に交付されます。義足を十分に使いこなせなかったりその他の病気や症状によって運転に支障が出そうと判断されたりした場合、運転免許証を交付されることを拒否されてしまうことがあります。

運転したいと考えたら、「安全運転相談窓口(#8080)」に電話がおすすめ

身体の障害などにより運転に不安がある人が、相談できる窓口があります。
それは、安全運転相談窓口(#8080)です。

身体の障害や一定の症状を呈する病気等による症状のため、自動車等の安全な運転に支障のある方へ

 身体の障害や一定の症状を呈する病気等による症状のため、自動車等の安全な運転に支障のある方については、道路交通法等により、一定の要件を設けて、運転免許を拒否(与えない)、保留(一定期間与えない)、取消し、停止されることが定められています。ただし、運転免許の拒否、取消し等を受ける要件に該当しているか否かは、あくまでもそれぞれの方について個別に都道府県公安委員会が判断します。

 身体の障害や病気の症状が自動車等の運転に及ぼす影響は、個別具体のケースによりまちまちで、運転免許に一定の条件を付すことにより補うことができる場合や、治療により回復する場合等がありますから、病気や事故等による身体の障害や病状のため運転に不安のある方は、積極的にこの窓口をご利用ください。

#8080 は全国統一の相談ダイヤルとなっていて、ここに電話をかけると発信場所を管轄する各都道府県の安全運転相談窓口にかかるようになっています。(※通話料は利用者負担です)

安全運転相談窓口では、警察官もしくは看護師などの医療系職員により

  • 免許の条件付与についての説明
  • アドバイスの実施
  • 病院を紹介するなどして医師の診断を受けるように指導
  • 面接や検査の予約をとる

といった対応を受けることができます。

#8080 がつながりにくいときは、都道府県警察の安全運転相談窓口に直接電話をかけるとつながることがあるようです。
(※都道府県警察の安全運転相談窓口リスト(PDF)はこちらから参照できます)

ちなみに「安全運転相談窓口」は、以前は「適性相談窓口」と呼ばれていましたが、令和元年11月に名称が変更されました。

相談の結果、医師の診断書が必要になる場合も

ところで、平成26年6月より免許取得・更新などの時には、すべての申請者が以下の質問表に「はい・いいえ」で回答しなければなりません。

◆質問表

  1. 過去5年以内において、病気(病気の治療に伴う症状を含みます。)を原因として、又は原因が明らかでないが、意識を失ったことがある。
  2. 過去5年以内において、病気を原因として、身体の全部又は一部が、一時的に思い通りに動かせなくなったことがある。
  3. 過去5年以内において、十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、日中、活動している最中に眠り込んでしまった回数が週3回以上となったことがある。
  4. 過去1年以内において、次のいずれかに該当したことがある。
  5. 飲酒を繰り返し、絶えず体にアルコールが入っている状態を3日以上続けたことが3回以上ある。
  6. 病気の治療のため、医師から飲酒をやめるよう助言を受けているにもかかわらず、飲酒をしたことが3回以上ある。
  7. 病気を理由として、医師から、運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている

この質問票に対して「はい」と回答した場合、直ちに免許申請が拒否・保留されたり、免許取り消し・停止されるようなことはありませんが、医師の診断書が必要になることがあります。
(虚偽の記載をすると罰則がありますので、正確に記載するようにしましょう。)

ご自身の体調や症状で不安に思う点があれば、免許申請前に安全相談窓口(#8080)で相談しておくと手間を減らせるかもしれません。

診断書は、公安委員会指定の書式があるので、人によっては安全運転相談後に病院に行く必要が生じます。ただし、指定書式の診断書は最寄りの警察署などでもらえることもあるようです。

運転前に適性試験を受ける必要がある

さて、義足ユーザーが運転するにあたっては運転免許証の取得です。
警視庁の資料にはこのようにあります。

◆身体障害者に対する適性試験(運動能力)実施要領(抜粋)

第3 適性試験の対象

この要領による適性試験の対象となる者は、自動車等の運転に支障を及ぼすおそれのある四肢又は体幹の障害がある者とする。

第4 適性試験の方法

1 適性試験は、受験者に対し、質問をし、及び四肢の運動等を行わせるほか、身体障害の状態・程度や運転しようとする自動車等に応じた測定器具を使用して検査を行い、又は実際に自動車等を操作させる等の方法により行うものとする。 ただし、質問及び四肢の運動等で運動能力の判断ができる場合は、他の方法による試験は省略することができるものとする。

2 適性試験は、運転免許課及び他の方法により試験を省略できる場合は警察署(分庁舎を含む。以下「署等」という。)において実施するものとする。

引用元:身体障害者に対する適性試験(運動能力)実施の標準について

義足ユーザーは「自動車等の運転に支障を及ぼすおそれのある四肢又は体幹の障害がある者」に該当しますので、運転免許証の新規取得か、すでに持っていて運転再開したいのかに関わらず、運転前に適性試験を受ける必要があります

義足ユーザーが運転するためには、適性検査を受けて「適格」もしくは「条件付き適格」と判断されなくてはなりません。

適性試験とは?

では「適格」「条件付き適格」「不適格」を実際に判断するための適性試験は、どのようなものなのでしょうか?
実施要領にもあるように、適性試験は、基本的には「適性相談」と「適性検査」に分けられます。

(※なお、警察庁や公安委員会の資料では「適性相談」「適性検査」と厳密に区別は確認できませんでした。ただし、地方警察広報や運転免許所有者で一般的に使われている用語のため、今回は適性試験を「適性相談」「適性検査」と区別しています)

適性試験は、基本的には免許センターで実施されます。

1.適正相談

 

 

 

引用「運転適性相談の状況」警察庁

適性試験では、身体の状態や希望する免許種類(普通、大型など)などを伝えることになります。

適性相談のみで運動能力の判断ができる場合は、シミュレーターなどを利用した適性検査は省略することができるとされていますが、多くの場合は省略されずに適性検査も実施されているようです。

2.適性検査

適性相談のみで運動能力の判断ができない場合、適性検査に進みます。
適性検査では、具体的にこのような検査を行います。

  • 身体障害の状態・程度や運転しようとする自動車などに応じた測定器具を使った検査(座席への自力での乗降、運転シミュレータなど)
  • 実際に自動車などの運転

例えばシミュレータならば、運転操作に必要な押す・引く・回す・踏むなどの基礎的な操作力などを測定することになります。

◆シミュレータで見られる評価項目の例

  • ハンドル操作
    操作力、操作時間、操作量、調整力、持続力など
  • アクセル、ブレーキ操作
    (足で操作する場合)踏力、反応時間、踏む位置の正確性、調整力、持続力
    (手で操作する場合)押す力、引く力、反応時間、調整力、持続

参考『肢体不自由者のための自動車と運転補助装置の選択方法』国立身体障害者リハビリテーションセンター

適性検査の内容は一律というわけではなく、免許の新規取得か既得か、身体の状態や車種、試験場などによって変わります。

次は、実際に安全運転窓口に相談してから運転ができるようになるまでの流れを、新規取得と更新のパターンに分けて見てみましょう。

義足ユーザーが実際に免許を取得する流れ

義足ユーザーが運転免許証を取得するまでの流れはどのようになっているのでしょうか?

  1. 運転免許証を新規取得するパターン
  2. すでに免許を持っていて運転再開したいパターン

このどちらのパターンであっても、適性試験を受けることには変わりありません。
新規取得でも、すでに免許を持っている方でも適性試験によって

  • 無条件適格
  • 条件付き適格
  • 不適格

のいずれかが判断されます。

1.義足ユーザーが運転免許証を新規取得する場合

まずは、義足ユーザーになって新しく運転免許証を取得するパターンを見てみましょう。
安全運転相談などで予約し、適性試験を受けるまでは共通です。
その後、無条件適格・条件付き適格・不適格で流れが変わります。

・無条件適格

指定教習所で健常者と同様の教習を受けることになります。教習所での技能試験、試験場での適性試験・筆記試験を受けて運転免許証を取得します。

・条件付き適格

指定外教習所もしくは個人的な教習により技能試験を受けます。試験場で適性試験・筆記試験・技能試験を受け、運転免許証を取得します。
運転を行うためには、免許証の種別、車種・改造の限定、手動運転装置などといった指定の条件を満たす必要があります。

・不適格

残念ながら、現状では車の運転はできません。
ただし、リハビリ等により運動能力が改善されれば判定を受け直すことができます。

2.もともと免許があり、義足ユーザーとなってから運転を再開したい場合

次に、義足を使う前から運転免許証を持っており、運転を再開したいパターンを見てみましょう。
(※更新申請時以外で病気等の申告をした方については、制度上「臨時適性検査」と呼ばれますが、内容は通常の適性検査と同様です)

免許をすでに持っている場合でも、安全運転相談などで予約し、(臨時)適性試験を受けるまでは共通です。
その後、無条件適格・条件付き適格・不適格で流れが変わります。

・無条件適格

免許取得時と同じ条件で運転することが可能です。

・条件付き適格

自動車に改造するなど、新たに加わった指定の条件を満たせば運転が可能になります。
条件としては、免許証の種別、車種・改造の限定、「手動運転装置付き自動車に限る」「AT車限定」などがあります。

・不適格

現状では車の運転はできず、免許は取り消しになります。
ただし、リハビリ等により運動能力が改善されれば判定を受け直すことができます。

義足ユーザーが使える制度

義足ユーザーは車種や身体障害者手帳により、税の減免や、自治体により自動車使用のための費用助成、貸付制度を受けられることがあります。

◆義足ユーザーが使える可能性のある制度

  • 自動車運転免許取得費の助成、貸付
  • 自動車改造費の助成・貸付
  • 障害者用自動車購入費の貸付
  • 自動車取得税の減免
  • 消費税の免税(改造車に限る)
  • 自動車税の減免
  • 有料道路通行料金の割引
  • 自動車燃料費の助成
  • 駐車禁止規制の除外

ただし免許証を新規取得する場合、教習所に受講を申し込む前に相談する必要がありますので、忘れずに役所や地域の福祉事務所などに相談しましょう。

義足ユーザーなどが実際に運転している様子

義足ユーザーの中には、Youtubeで運転の様子を発信している人もいます。
左足で操作できるように車に改造を加えたり、アクセルを踏み込んでいたりする様子がよくわかります。

 

右足が股義足で、車を左足で操作できるように改造して運転している様子を紹介している「障害者のチャレンジTV」くろださん。
健常者の方でも運転できるように左アクセルと右アクセルを切り替えられるようにしている様子などとてもよく分かります。




左足が大腿義足で、いろいろな車種のMT車を運転している様子を発信しているもん吉さん。

動画を見ると、義足で強く踏み込んでいる様子などがよくわかります。

(※補足すると、速度や操作など、免許証の許可された範囲内で運転しています。)

義足ユーザーではありませんが、車椅子でタレント・アイドル活動をしている猪狩ともかさんが高速道路を運転している様子を紹介した動画です。
手動装置でアクセル・ブレーキを制御しながら運転できる様子がよく分かります。

義足ユーザーが運転で気をつけるべきこと

義足ユーザーが車を運転するときに気をつけておきたいことをまとめました。

長距離運転では必ず休憩を挟む

長距離座りっぱなしで運転すると、自覚しないうちに疲労が溜まります。
加えて、大腿義足や股義足ユーザーであれば、断端と義足の接触部分に問題が生じることもあります。

疲労により転倒や操作ミスなどが起こったり、断端部の痛みが生じたりするのを防ぐため、長距離運転では必ず休憩を挟むようにしましょう。

糖尿病や薬の副作用による低血糖予防策を立てる

低血糖により安全運転に支障をきたすことは絶対に避けなくてはなりません。
糖尿病のある方は低血糖を防ぐ予防策を徹底しましょう。

運転補助装置の練習をする

義足ユーザーとなる前にも運転していた方は、その頃の感覚が強くあると操作ミスに繋がりかねません。
必ず義足や車の改造をした状態で慣らし運転を行い、まずは短距離から身体を慣らしていくようにしましょう。
また、民間の教習所で練習できる場所を探し、適性検査までに練習しましょう。下記に、全国の教習所を検索できるwebsiteを掲載します。
障害者講習 – 運転免許取得のための自動車教習所、自動車学校ポータルサイト|zensiren.com

加齢による体力の低下、病気の進行による筋力低下で運転能力が落ちる

若いときは運転に差し支えなくとも、年をとると義足ユーザーでなくても安全運転が難しくなってきます。
義足ユーザーにとって、せっかく得た運転免許を手放すのは苦しい決断ではありますが、「おや?」と思うことがあれば再度免許センターの適正相談を受けましょう。

よくある質問

原付・バイクの運転はできますか。トラクターや大型車両の運転はできますか。

運転できる車種は、義足が

  • 両側か片側か
  • 大腿義足・股義足か下腿義足か

などにより決定します。

◆義足ユーザーが使える可能性のある制度

 

 

大型

中型

準中型

普通

大型特殊

大型二輪

普通二輪

原付

小型特殊

牽引

大型第二種

中型第二種

普通第二種

大型特殊第二種

牽引第二種

両・大腿義足/股義足

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※1

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両・下腿義足

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片・大腿義足/股義足

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片・下腿義足

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「身体障害者に対する適性試験(運動能力)実施の標準について(通達)」警察庁をもとに著者作成

※1・・・AT車かつアクセルブレーキ手動式に限ります
※2・・・三輪または四輪に限ります
※3・・・体の状態または運転の技能により、AT車またはAT車かつアクセルブレーキ手動式に限る場合もあります
※4・・・小型二輪車に限ります
※5・・・AT車に限ります
※6・・・体の状態または運転の技能により、AT車に限る場合もあります

義足ユーザーは基本的に、運転操作上有効な義足を使用することが前提です。

アクセルを左に改造した車両は難しいですか

通常義足は、運転に最適に作られているわけではありません。左アクセルの操作難易度は、正直なところ義足の適合性と習熟度合いによります。
左アクセルに慣れるまでは慣らし運転や短距離運転にとどめ、断端に痛みがあるなど義足の調子が悪いときは運転を避けるべきでしょう。

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