ソケットの理想のゆるさ・きつさを追い求めた先は…?~BionicM義肢装具士・松原のコラム vol.3~

こんにちは、BionicM・義肢装具士の松原です。

コラムの3回目では“ソケットのゆるさ加減”をもうすこし深堀りしていきます。

目次

  1. 状況に応じてソケットの理想のゆるさ、きつさは違う
  2. ちょうどいい基準が決めにくい理由
  3. 調整式のソケットという選択肢

状況に応じてソケットの理想のゆるさ、きつさは違う

ソケットはゆるい方が良いと、前回お話ししました。

それは“萎縮”という側面から考えた場合です。
力の伝達という側面では、きつい方がいい場合があります。

紐靴のことを思い出してみて下さい。

思いっきり激しくスポーツしようと思ったら、紐をきつく締め直しませんか?
でも、終わったらゆるくしたくなりませんか?

ソケットも同じです。

義足でスポーツとまでいかなくとも、早く歩きたい時など、きつくしたいと思いませんか?
でも、普通に歩く時はそれほどきつくなくても良いですよね。
ましてや、椅子に座っている時などは、ゆるい方が楽だと思いませんか?

つまり、状況に応じてソケットの理想のゆるさ、きつさは違うのです。
しかし、現代のソケットは基本的に“ゆるさ”、“きつさ”は変更できません。

ではどうするか?
“ゆるさ”、“きつさ”を選ばなくてはなりません。

2回目のコラムで申し上げた通り、きつすぎると、萎縮してしまいます。
また、きつすぎると、痺れてしまうこともあり、1日中装着しているのも大変です。
このため、どちらかと言えばゆるめが良いという判断をしているのです。

しかし、ゆるければゆるいほど良いというものでもありません。
ゆる過ぎると力が伝わりにくくなってしまいます。

また、ゆるいソケットだと、中で切断された足の部分が不安定になります。
その結果、上体が安定しなかったり、ソケットの縁で傷を作りやすくなったりしてしまいます。

なので、ゆるさにも限界があるのです。
恋人への束縛と同じですね(あくまで一般論です)。

ちょうどいい基準が決めにくい理由

ここまで話をすると、多くの方が考えるのではないでしょうか、きつくもなく、ゆるすぎもしない、ちょうど良いのが一番なのではないか、と。

問題を難しくしているのが、ソケットの中に入れる切断された足の部分が、1日の中で太さが変わるという現象です。

多くのユーザが感じていることだと思いますが、朝一番が太く、1日中義足を履いた夜が、一番細くなります。
また、この1日の中での差は、ソケットのきつさ具合により、大きくなったり、小さくなったりします。

例えば、きついソケットであれば、きつい分、夜までにより細く絞られてしまう傾向が強いのです。

さらにこれらは、人によっても、その細くなる度合いが異なります。
例えば同じ“きつさ”のソケットがあったとしても、ユーザによって細くなる度合いは違ってきてしまうのです。

このため、スポーツをするしないに関わらず、この太さに合わせれば良いという万人共通の基準が決めにくいのです。

この結果、切断された足の部分が一番太い朝一番で履けて、かつ、1日中履いていても絞られる量が一番少なくて済む、可能な限りゆるいソケットを、ユーザ毎に決めるしかないのです。

まとめると、力が逃げたりせず、ソケットが抜けたり傷が出来たりしない程度にゆるいというのが、わたしの考える良いソケットです。

ここで、これまで説明してきたことを単純に考えたら、時間や場面によって調整出来たら良いのではないかと考える人が多いと思います。

辛いのが苦手な人から、好きな人まで、皆美味しいカレーが食べられるよう、辛さが選択できるC〇C〇壱番屋と同じように。(誰も聞きたいとは思ってないとは思いますが、わたしは辛いのが苦手です、なので“盆”カレーネオの甘口美味しいです)

実際、調整式のソケットに関しては多くのアイデアが試され、商品化されてきました。
でも、なかなか売れるものはできませんでした。

最近は、スキーブーツやスポーツシューズで使われているような、ハンドルを回すとケーブルが引っ張られ、全体的に締まるというシステムが販売されています。
それなりに好評を得ていると聞いています。

ただ、ものすごく売れているとまではいかないようです。
なぜだと思いますか?

調整式のソケットという選択肢

いくつか理由はあるとは思いますが、もう一度、紐靴のことを思い出して下さい。

靴の専門家からすれば、毎回靴を履くたびに、靴ひもを結び直すのが理想だと言います。
靴の中で、あるべき場所に足を入れ、かつ、足が前後に動かないようにするためです。

ですが皆さん、毎回、結び直してますか?

面倒で、ゆるめなくても履ける程度に結んで、そのままにしていませんか?
実際、毎日のことですので、面倒と思う人が多いのが実際だと思います。

ソケットの場合も同じで、最初は便利だと思うのですが、段々・・・

ということで、調整式は製品として販売されてはいます。
試してみたい方は、担当の義肢装具士さんにお願いしてみて下さい。

今回のコラムをまとめます。

「ゆるめのソケットを試してみませんか。きついソケットが好きな方は、ゆるくすると最初は不安定だと感じてしまうかもしれません。でも、慣れます。長い目で自身の切断された足の部分のことを考えてみませんか?」

次回は、ソケット再製作時に良くある「上手くいかない事例」に関してお話しします。

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